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東京高等裁判所 昭和25年(行ナ)14号 判決

原告 高橋幹二

被告 特許庁長官

一、主  文

特許庁が昭和二十四年抗告審判第二五〇号(昭和二十二年商標登録願第一五七一八号拒絶査定不服抗告審判事件)について、昭和二十五年六月二十日なした審決はこれを取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

二、事  実

原告代理人は主文と同趣旨の判決を求め、その請求原因として次の第一、第二の通り陳述した。

第一  本件の経過

(一)  原告は長提燈の図形内に「みやこ」の仮名文字を縦書した商標について、昭和二十二年十二月十五日商標法第五条の規定によつて、同法施行規則第十五条に規定する類別「第四十七条穀菜類、種子、果物、穀粉、澱粉及びその製品」を指定商品として特許庁に登録を出願したところ(昭和二十二年商標登録願第一五七一八号、甲第十二号証)、同年七月九日附で澱粉製糊を指定商品とする登録第八七四四八号商標(甲第四号証)と商標が類似し且つ同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第二条第一項第九号によつて登録ができないものとし、意見書提出方の通知(甲第三号証)があつたので、原告は昭和二十三年八月七日指定商品を「第四十七類穀菜類、種子、果物、穀粉、澱粉及び其の製品但し澱粉製糊及び其の類似品を除く」と訂正し(甲第五号証)、且つ同日本願商標が右引用例登録第八七四四八号商標と類似していたとしても同一又は類似の商品に使用しないから、商標法第二条第一項第九号の適用がなく登録せらるべきものなりとの意見書(甲第六号証)を提出した。

(二)  特許庁は更らに、昭和二十三年八月三十一日附を以て本願商標は「みやこ」の仮名文字を縦書し、第四十七類種子及び果物を指定商品とした登録第二八九〇三〇号商標(甲第七号証)と類似し、且つ同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第二条第一項第九号によつて登録できないものとし意見書提出方の通知(甲第八号証)があつたので、原告は昭和二十三年九月二十五日本願指定商品を「第四十七類穀菜類、穀粉、澱粉及び穀菜類、種子、果物、穀粉及び澱粉の製品、但し澱粉製糊及び其の類似品を除く」と訂正し(甲第九号証)、且つ同日本願商標が右引用例登録第二八九〇三〇号商標と類似しているとしても同一又は類似の商品に使用しないから、商標法第二条第一項第九号の適用がなく登録せらるべきものなりとの意見書(甲第十号証)を提出した。

(三)  特許庁は昭和二十四年六月二十三日附で本願商標は「昭和二十四年三月十四日附を以て通知した理由によりこれを拒絶すべきものと認める」との拒絶査定をなし、その謄本(甲第十一号証)は同年六月三十日原告に送達された。しかし、原告は右昭和二十四年三月十四日附の通知を受けていないので特許庁審査官に聞き合せたところ、本願商標は「都」の文字の第四十七類穀菜類、澱粉但し加工麦澱粉製糊を除いた商品を指定商品とする登録第一一三五一四号商標及び「みやこ」の仮名文字の第四十七類種子及び果物を指定商品とする登録第二八九〇三〇号商標とその商標が類似し且つ同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第二条第一項第九号により登録できないと認めて意見書差出し方の通知を発したとのことであつた。

(四)  よつて、原告は本願指定商品を第四十七類穀菜類穀粉、種子果物及び澱粉の製品但し澱粉糊及びその類似品を除く旨の訂正書(甲第一号証)を添え昭和二十四年七月二十九日拒絶査定に対する抗告審判を請求したところ(昭和二十四年抗告審判第二五〇号)昭和二十五年六月二十日附で抗告審判請求は成立たないとの審決があり(甲第十四号証)、同月二十七日原告に送達された。

第二(一)  而して、右昭和二十四年七月二十九日附訂正書(甲第一号証)に記載してある本願指定商品は、穀菜類、種子、果物、穀粉及び澱粉の各個ではなく、その製品だけに限定したものである。従つて、本願商標の指定商品は前記登録第一一三五一四号商標の指定商品中には包含されていないし(甲第二号証の一)、又前記登録商標第二八九〇三〇号商標の指定商品にも包含されていない。然るに、本件抗告審判の審決においては、本願指定商品は第四十七類の穀菜、穀粉、種子、果物及び澱粉とその製品なりと認定して、本件拒絶査定において引用している前示二つの登録商標の指定商品を包含しているので、商標法第二条第一項第九号に該当し登録を拒否すべきものとしたのは不当である。

本願指定商品は前記のように、出願人において三回に亘つて訂正し(甲第一、五、九号証)、しかも、その度毎に引用例の登録商標を使用すべき商品を削除しているところから見ても、右審決の認定が誤りであることがうかがわれる。

(二)  本件抗告審判の審決においては、本願商標は前記登録第一一三五一四号商標及び登録第二八九〇三〇号商標と外観は相違しているが、称呼及び観念の点で類似している商標なりと認定した。しかし、本願商標の長提燈の図形とその内に記載してある「みやこ」の仮名文字とは構成上軽重のない存在である。故に、右図形と文字とから構成されている商標にあつては、需要者及び取引者はその文字と図形とを不可分的一体として称呼し観念されるのが普通であるから、本願商標は「ミヤコチヨーチン」と称呼し又観念される。従つて、前示引用例とはいずれも称呼及び観念上相紛われる虞れがないものである。

(三)  なお、原告は前記の通り(第一の(三))本件登録出願人として昭和二十四年三月十四日附の登録拒絶理由通知書の送達を受けていないのであるから、本件拒絶査定が不当なると共に審決もまた取消を免れないものである。

(証拠省略)

被告代理人は原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め、答弁として次のように陳述した。

第一  本件登録の出願から抗告審判の審決に至る迄の原告の主張の経過は総てこれを認める。しかし、次の理由によつて本訴請求は排斥せらるべきである。

第二(一)  本願商標は長提燈の図形内に「みやこ」の仮名文字を縦書して成るものである。次に本願商標の拒絶理由に引用した登録第一一三五一四号商標は「都」の文字を記して成り、同第二八九〇三〇号商標は「みやこ」の仮名文字を記して成るものである。そこで本願商標と引用の各登録商標との商標の類否について比較検討してみるに、外観上は互に類似している商標ではないが、称呼、観念において両商標は互に類似している。即ち、本願商標が長提燈の図形内に「みやこ」の文字を記して成るものであるからといつて、必ずしも「ミヤコチヨーチン」と呼ばれるものとは認められない。却つて、このような商標の態様では「みやこ」の文字が要部で、長提燈の図形は附飾的か輪廓的のものとも見られる。むしろ迅速を尚ぶ商取引においては「みやこ」と呼ぶのも不自然ではない。従つて、引用登録商標と同一の称呼、観念をも生ずる本願商標は引用登録商標と結局称呼、観念上の類似商標であることを免れない。

(二)  本願商標の指定商品は第四十七類穀菜類穀粉種子果物及び澱粉の製品但し澱粉糊及びその類似品を除く、に訂正したものであるが、これをひらたくいえば、穀菜類、穀粉、種子、果物、そして澱粉の製品であつて、これらの中から澱粉糊とその類似品を除く、ということに解すべきであつて、原告主張のように穀菜類の製品、穀粉の製品、種子の製品、果物の製品、澱粉の製品等であるとは認められない。然らば、穀菜類、澱粉、種子、果物を指定商品とする引用登録商標と本願商標の指定商品とは互に牴触するものである。

(三)  以上述べた通り、本願商標は引用登録商標と類似の商標であつて、同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第二条第一項第九号に該当し、その登録は拒否すべきものである。

(証拠省略)

三、理  由

本件の商標登録出願から抗告審判の審決に至るまでの経過が原告主張の通りであることは当事者の間に争のないところである。よつて、右出願商標の指定商品をみると右争のない事実によつて明かなように原告は三回に亘つて本願商標の指定商品を訂正している。そして、その最後の訂正書である甲第一号証には指定商品として「第四十七類穀菜類穀粉種子果物及び澱粉の製品但し澱粉糊及び其の類似品を除く」と記載してあるから、この記載のみから普通の用語例に従つて解すれば、本願商標の指定商品は被告主張のように「穀菜類、穀粉、種子、果物、そして澱粉の製品であつて、これ等の中から澱粉糊と、その類似品を除く、ということに解すべきであつて、原告主張のように穀菜類の製品、穀粉の製品、種子の製品、果物の製品、澱粉の製品等であるというようには認められない」と解するのが普通の解釈であるということができよう。しかし、本件では、特別の事情があるので、原告は登録出願人として指定商品を三回に、亘つて訂正している。この訂正するに至つた経過即ちその各訂正書と訂正するに至つた理由とを参酌するときは、原告主張のように、最終訂正書である右甲第一号証列記の各商品の製品のみを指定商品とした趣旨であると解する余地がないとはいい得ない。今これを詳説すれば、原告は最初「第四十七類穀菜類、種子、果物、穀粉、澱粉及び其の製品」を指定商品として出願したところ(甲第十二号証)、「澱粉製糊」を指定商品とする引用例登録第八七四四八号商標の指定商品(甲第三、四号証)と牴触しないようにするため昭和二十三年八月七日附訂正書(甲第五号証)によつて「澱粉製糊及び其の類似品」を除き、次に、引用登録第二八九〇三〇号商標の指定商品(甲第七、八号証)と本願商標の指定商品とが「種子及び果物」の点で牴触するというので、昭和二十三年九月二十五日附訂正書(甲第九号証)によつて、本願商標の指定商品の中から「種子及び果物」を削除したのである(但し、この訂正書である右甲第九号証には指定商品を左の通り訂正するとして「第四十七類穀菜類、穀紛、澱粉及び穀菜類、種子、果物、穀粉及び澱粉の製品、但し澱粉製糊及び其の類似品を除く」と記載してあるので、指定商品を特定する記載方法として甚だ紛らわしく不正確であることはいうまでもない。ただ右甲第七、八号証と対照することによつて漸く「種子及び果物」を除外する趣旨の記載であることを推察しうる程度のものである)。次に、昭和二十四年七月二十九日附訂正書(甲第一号証)によると原告は引用例登録第一一三五一四号商標の指定商品(甲第十三号証)と牴触することを避けるため従前の指定商品の中から「穀菜類及び穀粉」を除外したものとみられないこともない。但しこの甲第一号証が本件出願の最終の訂正書として指定商品の記載方法が不正確のものであることは本判決理由の冒頭の個所で先に説明した通りである。このように、指定商品を数回に亘つて訂正し、その最終訂正書に記載してある指定商品が従前の訂正書並びに訂正の理由と対照してみると不明確で、しかも、その解釈の如何によつて商標の登録の許否が決せられるような場合には、更らにこれを明確ならしめた上に許否の審決をなすべきであつて(商標法施行規則第十六条特許法施行規則第十一条第一項)、最終訂正書の記載だけをみて、それの普通の用語例のみに従つて出願商標の指定商品を決定するのは正当とはいい得ない。本件登録出願商標の指定商品については、更らに明確にした上に登録の許否を決すべきであつて、この点において本件審決には違法があるから該審決を取消し、訴訟費用の負担については民事訴訟法第八十九条第九十五条の各規定を適用し主文の通り判決する。

(裁判官 中島登喜治 小堀保 薄根正男)

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